.shtml> コラム:ダンスレビューVol.24:ダンス・舞踊専門サイト(VIDEO Co.)


D×D

舞台撮影・映像制作を手がける株式会社ビデオが運営するダンス専門サイト

 

ニュース・コラム

舞踊評論家・日下四郎氏の連載コラム「ダンスレビュー」

ダンスレビュー

新バージョンへの1歩を見せた
  新国立劇場 DANCE EXHIBITION 2008  ダンスプラネット28
Aプロ9月6-8日、Bプロ13-15日 at 新国立劇場 小劇場THE PIT

日下 四郎 [2008.9/29 updated]
 さりげなく実験的一面を秘めた、現代舞踊のひのき舞台といってもいい新国立劇場のダンスプラネット。スタート以来すでに10年を超える年月が流れ、気がつけばいつしか28回のプロジェクトを発表している。コンテンポラリーという、文字どうり時代の最先端をいくアート感性の芸術だ。古典バレエのレパートリならいざ知らず、その間に上演された舞台には、歳月と共におのずから技法とコンテンツにそれなりの推移が見られた。しかし今回はその出演ダンサーと中身に、一段と強い踏み出しが感じられた。かなり明白にカラーが一変したのである。.
 前半3ステージの出演者は、梅田宏明、二見一幸、山田うんの3人。後半には、川口ゆい、加賀谷香、上島雪夫らの顔が見える。いずれもこの新国立劇場へ初にお目見えする先鋭だが、なかでも両プロのトップを飾る梅田と川口の二人は、単に国立といわず、これまで国内の市場でもほとんど名前を知られていないといってもいい舞踊家である。ただしこれまで外国における両者の活動には、共にすこぶる活発なものがあったようで、そこらあたりに新国立劇場制作サイドの意図的な新しい姿勢が読み取れる。
 作風は身体表現と演出の2面に関してともに前衛的。前者はフロアの中心に突っ立ったダンサーが、両手の指先を急激に開閉する動作にはじまり、これが次第に全身の各パートに及ぶ。間断を置かずに進行するその四肢の変化が、同時に左右上下から照射される照明デザインと細かくシンクロするよう工夫されており、筋肉の切れとするどい反射神経には、水準を抜く緻密さがある。だがダンス作品としては、新規を狙っているようで、実は動きの基本の部分を反復しているだけの物足りなさも残った。勅使川原三郎が追及する振付との類似も、やや気になるところ。
 それに比較すると、後者のソロ「REM-The Black Cat」には、いますこし演出面での広がりがある。人体を宙吊りにしたり、手足の痙攣、猫的なしぐさを生かした椅子遊びなど、細かく動き回る小器用さが武器だが、ベースとしての作品の勝負のほうは、結局はIT技術の先端を駆使した空間美学とサウンドの聴かせようにあるようだ。映像モニターにあわせた猫の詩(ただし英語)、上下する真っ赤なネオン棒、また壁いっぱいにひろがる星座の幾何学模様など、海外での評価にはおそらく日本人の繊細な工学センスへの嗟嘆が先行したと推理するが、情報先端国である当地でみるかぎり、演出処理を含めたテクノロジー自体に、それほどの革新性は感じられない。
 それに続くプログラミングにも、2週にわたる両プロには、それぞれ共通した人選の工夫が読み取れる。ダンス自体に焦点と比重をおいた作品として、Aプロではカレイド・スコープの二見一幸、Bプロではソロ一本で勝負した加賀谷香が、それに当たるだろう。田保知里はじめレベルの揃った手持ちのダンサー陣の群舞、そこへクネクネした独自のスタイルを持つ二見の踊りを配して進行するのが、「“形が”“人が”語り始めると」と題した前者の作品。全体の作りに依然デビュー時からのスタイルが尾を曳いていて、ヌーベルダンス風な人体の振付よりも、やはり映像処理(立石勇人)の美意識に依りかかっていたというのが率直な感想。
 いっぽう加賀谷の「パレードの馬」は、バイオリンの生演奏(大田恵資)を相手に、吊るされた紗幕の内外を、充満した肉体を駆使してソロ一本で踊り抜く。このダンサーのうまさには、一頭地を抜くものがあり、その点に賭けた心意気は多としたいが、この人が本来秘めているはずの才能と個性を、いま少し多様化して立体的な舞台に視覚化する演出がほしい気もした。
 トリを受け持ったのは、山田うんと上島雪夫の2人である。空間を生かしながら、共に劇的カラーを流れに添えたダンスを目指したようだ。両者とも目下新進創作家として、それぞれおのれ固有の振付スタイルで創作を模索しつつある段階にあり、前者の「カッコウ」は、それをユーモラスなトリオの変化球で、生演奏によるピアノ曲の視覚化を狙い、後者はエンターテインメント性の強い人物の出し入れを活用して、「Flush~生き急ぐ時間たち~」をポイントに、創作に色どりを添えた。
 こうして並べてくると、一週間をまたいで発表されたA,B両プロは、いずれも前衛・踊り・立体の3項目を、狙いとして意識したプログラミングであることがわかる。それを現行する日本の舞踊風景として展示してみせたかったのだ。しかし年間わずか2回ぐらいのチャンスで、それをフェアーに実現することは、ほとんど至難の業である。(他にこの劇場には《ダンス・テアトロン》というシリーズがあるが、こちらはどちらかといえばエスタブリッシュされた現代舞踊用の枠)。それでなくともコンテンポラリー・ダンスは、演劇寄りからモダン・アート、果ては電子工学まで、極めて広い巾の領域で、常に表現が試みられている。いったいどのジャンルをどのようにピックアップするのか。
 前衛を掬い上げながら、実験であっては不可ない。しかもそこに的確な現状が反映されていることが必要だ。プロデュース・サイドにしてみれば、これはほとんど仙人的眼力と芸術的素養を求められる仕事だ。しかし今回はそんな難しいプラニングの一端を、なんとかこなして一歩を踏み込んだ姿勢がみられた。今後とも少ない機会を生かしたコンテンポラリー・ダンスのおもしろさ、レゾン・デートルとしての具体の例を、じっくりと味あわせてもらいものだ。(7日、14日所見)

現代のドラマティックな心理バレエ [タチヤーナ]バレエシャンブルウエスト公演