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幕あいラウンジ バックナンバー

うらわまこと
 

Vol.25

ワークショップを体験しました」 
   
2001年 2月26日
 

 しばらく前からワークショップ、そしてアウトリーチということばがさかんに聞かれるようになりました。この2つは、芸術の制作者、アーチスト側が積極的にその受け手に働きかけ、育成する活動という点では共通 するものがあります。つまり芸術家ござい、といってふんぞりかえっていてはいけないという意識が広がり、また強くなってきたことを示しています。これは芸術に触れたい、さらに芸術に携わりたいという潜在層が増えてきたということにもつながるのでしょう。
 アウトリーチはまだ手探りの状態ですが、ワークショップは舞踊の世界でもずいぶん多くなりました。とくにコンテンポラリーダンスの分野では、単独に、また公演と組み合わせていろいろなところで開かれています。ワークショップといっても画一的にやり方が決まっているわけではなく、各人それぞれの方法があっていいのですが、次の点はとくに重要なのではないでしょうか。
 それは創造性、表現性、そして参加(体験)性です。ワークショップとはもともとの意味は工作の仕事場であり、そこでなにかを作り出すことですから、講義やレッスンではありませんし、といって振付者がダンサーを一方的に動かす場でもないでしょう。つまり参加者はアマチュア、未経験者であってもただいわれたとおりに動くのではなく、そこに自分として何かを創造し、表現することを実際にやってみるということです。
 実は、最近ワークショップに参加したのです。それは前回のこの欄でちょっとお話しした公文協のセミナーに組まれていた日玉 浩史さんのワークショップです。彼はカンパニーを率いてベルギーを中心に活躍しているコンテンポラリーダンサーで、この少し前に帰国、東京と仙台で舞台を、そして仙台ではワークショップもやっています。これは私が企画し、JCDN(ジャパン・コンテンポラリー・ダンスネットワーク)の佐藤範一さんに協力してもらって実現したものなのですが、いざとなっていろいろな驚きがありました。
 まず公立文化施設の担当者を主体に70名近くの希望者があったこと。つぎに、実際の参加者には年配者と男性が結構いて、その多くが革靴やネクタイだったことです。ここではどれだけの人が動いてくれるかが心配でした。それで最初に皆さんにぜひ体を動かして欲しい、私もやりますから、といってしまいました。
 そしてフロアのセンターでぜひどうぞ、と呼び掛けたら、なんとほとんどの人が腰をあげたのです。そして結構楽しそうで、1時間30分ほど誰も途中でリタイアしなかったこと、これが最大の驚きでした。お陰で私も最後まで付き合ってしまいました(というより、人一倍乗ってしまったのですが)。みんな身体を動かすのが嫌いではないんですね。
 この内容は説明するのが難しいのですが、組になってのボディコンタクトによるコミュニケーション、また物や文字の形を腕や体の動きによって表現するなど、それぞれがバラエティに富み、参加者はさまざまな新しい体験と発見をしたのではないかと思います。
 たしかに、なかにはどんなものかちょっと見てみようといった見学に近い気持ちで集まったかたも結構いたのかもしれません。しかし実際に行動したことによって、そしてさらにカンパニーのメンバーによるコンタクト・インプロビゼーションのデモンストレーションもあって、多くの人にダンスの見方とか楽しさが少しは分かってもらえたのではないかと思います。事実、最後の質問ではダンスを積極的に理解したいというようなものもあり、ワークショップの直接的な効果 だけでなく、ダンスの普及、振興にいくらかでも寄与したのではないでしょうか。




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