D×D

舞台撮影・映像制作を手がける株式会社ビデオが運営するダンス専門サイト

 

ニュース・コラム

山田マミのやっぱり、パリが好き

山田マミのやっぱり、パリが好き

フランス・パリ在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、パリっ子たちの日常生活も、
山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!

map1-2

洪水にユーロサッカーにデモに壊し屋。オニール八菜さんがブノワ賞を受賞して、宮城聡の「イナバとナバホの白兎」は大成功。イベント目白押しのエキサイティングな6月

でも、雨ばかりで身体にカビが生えそう。カタツムリも桜の木の上に避難。地上2メートルまで登るかね。

5月末にとうとうセーヌ川があふれて、パリから南に下った郊外は床上浸水。パリもやばい。川の水位がどんどん上がっている。ルーブル美術館もオルセー美術館も6月3日まで閉鎖で、保管庫の美術品を安全な場所に移動させているとニュースで。ベルサイユ宮殿は開館したものの、電車が止まっているのでアクセスできず、閑散としていたそうな。
ストライキも重なって、電車が来ないとか道路が封鎖されているのが、ストのせいなのか洪水のせいなのかさっぱりわからないけれど、ガソリン精製場のストは終わってとりあえずほっとした。
今後の生活を守るためにストには参加したいけれど、参加すればするほど給料が減るわけで、政府が譲歩しないとわかれば諦めざるをえず、日に日にスト参加者が減っていく。特に労働法改正に関しては断固反対だけれど、今月の給料が減らされるのはもっと困る…。
ストといえばデモ。街に繰り出し、民衆に訴え、経済を麻痺させてやろう!と組合側は意気込んでいるけれど、

おかげでこの渋滞。まあこれはいつものことかもしれない。譲り合い精神のないパリジャンは、とにかく1センチでも前に進んだが勝ち!と思っているから、二進も三進もいかなくなる。50センチ下がれば横の車が通れてスムーズに流れるはずなのに、そんなことは考えない。バイクも自転車も車の横をジグザグと抜けて走るし、その間を歩行者が横切るし、無法地帯のオペラ座前。

デモに便乗した「壊し屋」がかなりの悪さをしていて、バス会社はデモの前日にご覧の通り、バス停を保護。
ガラスを取り外し、外せない部分には板を貼っている。

シャンゼリゼのカルチェは閉店後にシャッターを下ろすから、ウインドウショッピングはできない。安全第一とだから仕方がないか。
この「壊し屋」は、暴力目的だから超危険。武器を携帯しているし、覆面して石や火炎瓶を投げたりするからね。特に警官の暴力に反対するデモは過激だった。たまたま通りかかったパトカーを包囲して、窓ガラスを割って火炎瓶を投げ入れたから、あっという間にパトカーは炎上して全焼。慌てて逃げた丸腰の警官を今度は鉄の棒で叩き殺そうとしたというかなり悪質な事件だった。デモが行われた通りから少し離れたところだったらしいから、デモ周辺には近づかない方がいい。壊し屋は目に付いたものを片っ端から壊すから、商店のウインドウやATMも壊されて、お店は大変な被害。昔ののんびりしたデモはもう見当たらない。なんでこう簡単に暴力に走るのだろう…

フランスに栄光あれ!

でもこれは?

パリのダンスは元気です!

2年に一度のコンクール、ダンス・エラルジーがテアトル・ド・ラ・ヴィルでありました。今年は韓国会場もあったし、パリ会場は午前中から客席はかなり埋まっていたし、名物コンクールとして人気を呼んでいるみたい。「エラルジー」とは「拡張」という意味なので、ダンスの定義をどこまで広げられるか、奇想天外な作品を期待したのだけれど、今回は結構まともで「踊り」というか「振り付け」のある作品が多かったから、「ちっとも面白くない」という声と、「見ごたえがあった」という意見に分かれた感じ。まあ、前回が前回だったから、ホッとしたような、外されたような。上の写真は韓国のダルプロジェクトの「月を消す」。最後のオチに大笑い。
初日のセミファイナルで17組が演じて、翌日のファイナルへは9組が進んだけれど、セミファイナルの方が絶対に面白い。

ジャン・オスタッシュとガランス・シルヴの「春の祭典」。好きだったのにファイナルには残れず。ダンサーがストラビンスキーの曲を歌いながら踊って、動きと音楽が見事に一致しているのが良かったのになあ。

チアーガールを模したモー・ブランデルの「タッチダウン」

ギリシャのクリストス・パパドプーロスの「 Opus 」

踊る造形美術はアトリエ37,2の「 Graft, danse d’une espèce à venir 」

これが一位に選ばれた Mithkal Alzghair の「 Déplacement 」。自国のシリアの現状をダンス作品にしていて、ふらふら歩いたり、両手を上げてホールドアップしたり、カモフラージュしながら戦火を逃れて移動する人たちを描いていて、心がズシン。
これ以外にも面白い作品はあったけれど、韓国会場の方がアバンギャルドだったみたい。

ガルニエ宮は何度来てもいいなあ

何度来てもその美しさに心が洗われるオペラ座ガルニエ宮での新サービスは、ディナーの予約。

予約すると食べ物と飲み物を用意して、テーブルを確保してくれるシステム。そんなサービスがあるとは知らなかったから、無料かと思ってもう少しで食べちゃうところだった。手を伸ばしたところで、ネームプレートに気がついた。

今日の演目は、イングリッシュ・ナショナル・バレエ団のル・コルセール。

緞帳がこれで、始まる前からワクワク!

メドゥーラのアリーナ・コジョカル、コンラッドのオジール・グネオ、二人とも素敵だった~

外に出れば、まだ明るい。今、夜の9時。

テロのせいで入場時の荷物検査あり。で、この行列。開演の30分前には開場するので、早めに来てくださいとオペラ座から。

博物館でダンス

歴史的建造物、つまり、美術館や博物館という劇場とは異なる空間でパフォーマンスをする企画が数年前からある。で、これがなかなか面白い。今回は狩猟自然博物館とフェスティバル・ジュン・イベントの提携で、マリー・オーツの「ジオラマ」を見に行った。「ジオラマ」といえば杉本博司で、その作品にインスピレーションを得て今回の作品を作ったそうな。まだ行ったことのない狩猟自然博物館、展示とダンスで二度美味しい。ケチな私にはもってこいの企画だ。

実物大の白熊と見つめ合うダンサー。

わ~、鹿の頭ばっかり。こんなにたくさんの種類がいるってことか。

お茶目~

最後は動物になりきったダンサーのパフォーマンス

ちょっと足を伸ばしてモンペリエ

6月になるとあちこちでフェスティバルやお祭りがあって忙しい。別に呼ばれているわけではないけれど、イベント好きだから出かけてしまう。
で、モンペリエ。ダンスフェスティバルが始まってる。

これがモンペリエダンスの本拠地、そしてCCNがあるアゴラの建物内。この階段を上るとパフォーマンススタジオ・バグウエイがある。

昔は刑務所だったアゴラ。元チャペルは完全暗転ができるイベント会場になって、白壁をスクリーンがわりにして映画などを上映している。今回はマッピングと言うアプリを取り込んだ携帯電話を使ってのお遊び。画面の輪が3つ重なると、ぐわーっとCGが動いて、アゴラ内の構造建築が見れるというもの。壁一面のCGが動くから、迫力満点。コンピューター技術ってすごいのね。

説明してくれたお兄さん、日本語ぺらぺらで、わかりやすいのなんのって!

スケートもコンテンポラリーダンスになりまして、パタン・リーブルの公演は、スケート場。寒かったけれど、スピードとその迫力に圧倒されました。

モンペリエの国立振付センターCCNのトップになったクリスチャン・リゾーの新作は、「イアン・シンドローム」

コメディー広場は不夜城。一晩中若者がたむろしている。

同時に開催されていたムーヴメント・シュル・ラ・ヴィルというフェスティバル。事前情報がほとんどなくて、現地に行ってこんなフェスティバルがありますよ~と言われてももう遅い。すでにモンペリエダンスのカリキュラムでいっぱいで、別の公演を見に行く時間などありゃしない。見れたのが、パトリス・ド・ベネデッティの「ジャン、戦没者記念碑へのソロ」。戦争に従事して心も体もボロボロになった父親を見て、父と同じ名前のすべてのジャンさんに捧げる作品。だから、モンペリエの戦没者記念碑の前で行われた。演劇と書いてあるけれど、ほとんどダンスで、身体訓練がしっかりしているから、しっくりくる。もちろん構成もしっかりしていて、戦争を知らない私にもずしりときた。戦争の悲惨さは、語り継がれなくてはならないのだと強く思う。朝9時半の公演だったからか、観客が少なくて残念。

山田マミ プロフィール

幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、、、あっという間に13年。住めば都のフランスはパリで、納豆と豆腐を食べ、中華街でベトナム麺をすすり、日曜日はマルシェで季節の野菜と魚を買い、時に日本のカボチャを育て、楽しく過ごしております。

 
map1-2