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ニュース・コラム

幕あいラウンジ バックナンバー

藤井 修治
 
Vol.27 「タカラヅカのこと」  
2001年3月22日
 何年ぶりかでタカラヅカに行って来ました。といっても関西の宝塚ではなく、東京宝塚劇場の宝塚歌劇団の舞台のことです。
 宝塚歌劇団は大正の初期に兵庫県の宝塚に出来た少女唱歌隊が発展したものだとか。宝塚の大劇場を本拠に一年中公演をしていて、ここで上演する演目を東京宝塚劇場でも上演しています。従来、この劇場では商業演劇も上演していましたが、今回改築されてことしの一月から新劇場での公演が始まり、雪月花星、そして宙(そら)の5組が45日ずつ交代で一年中公演を続けるとか。新しい劇場での花組の舞台を見ました。
 宝塚の舞台構成はいつも同じようです。3時間ほどの長さで、超大作は一本立てですが、たいていは前半に物語がある一時間半のもの、30分休憩のあとは一時間ほどのレビューです。ワンパターンだという人もいますが、長い時間をかけて到達した抜きさしならない堅固な構成といえます。予定調和の進行が心地よく、娯楽としては最高です。愉快なのは最後のフィナーレで、超派手な衣装の出演者全員が下級生からトップまで順序よく26段の大階段をつぎつぎに降りてきてあいさつしてキメのポーズで幕となるのはとにかく見ものです。こんな舞台を偉大なマンネリという向きもありますが、なまじ変なことをしないからこそ間違いなく楽しめるのです。
 宝塚の最大の特徴であり魅力でもあるのは全員が女性だということでしょう。歌舞伎が全員男性なのと対照的です。歌舞伎の主役は年輩の人が多く、人間国宝のおじいさんがお姫様になったりして、若い人には不可能な見事な演技を見せますが、これなど長年きたえた芸の力でしょう。宝塚の場合は若さの魅力です。そして男役のトップスターに人気が集中しています。彼女は体力の限り歌って踊って芝居してサービスします。男の姿なのにヒゲもなくモッコリもなく美と元気で魅了します。しかしトップになるとほどなく引退して女優になったりして別 の道を歩みます。今回の花組公演での男役のトップは愛華(あいか)みれという人でした。何年か宝塚を見ていなかったので初めて見たのですが、この公演を最後に引退するとか。若くてかっこいいので惜しい気がしますが、後輩に席をゆずることで宝塚のさらなる若返りをさせるのでしょうか。これも宝塚らしいことなんですね。
 今回の演目は例のように二本立て。前半はミュージカル・ロマン「ルートウィヒ2世」、後半はロマンチック・レビュー「アジアン・サンライズ」です。ルートウィヒ2世は実在のバイエルン王で、芸術三昧の生活を送り、作曲家ワーグナーに肩入れして莫大なお金を与えたり、中世風のお城を作って国家の財政を危機にさらすなどして退位 を迫られて、お城近くの湖で謎の死を遂げた人です。ヴィスコンティの映画では耽美的退廃的な魅力を見せましたが、こちらはやはり宝塚で、解りやすく豪華な舞台の中心に君臨していました。しかし史実に忠実に、王の同性愛傾向をほのめかし、男性同志のラブシーンも見られました。これが二人とも実は女性なので変な感じですが、これが宝塚の魅力であり、舞台というものの面 白さでしょう。現実から逃避して夢の中に真善美を追求する、ある意味では真摯な男の悲劇として作劇している点では納得できるものがありました。宝塚でも見方によっては人間や人生を教えてくれるのです。芸術的に見せながら実は何にもないというお芸術を見るよりはずっとすてきでした。レビューではダンステクニックは幼稚でもアンサンブルの完成度は抜群、見てて気持ちよいです。
 宝塚を見たいという人も多いようですがチケットの入手は困難を極めます。しかし一年中満員なのは他の舞台芸術にない魅力があるからです。食わず嫌いの人もいませんか?お酒の好きな人は甘いものを食べない傾向があります。しかし甘いも辛いも飲んで食べてこそ人生楽しいと思います。見たことのないかたに一度は見ることをおすすめします。



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