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ニュース・コラム

幕あいラウンジ バックナンバー

うらわまこと
 
Vol.41 「楽しくゆったりと舞台が見られるように
  ー観客も意識をもってー」     
 
2001年11月7日
 

 最初にお断りしておきますが、私は踊りと名の付くものはすべて大好きです。そしていつもいっているとおり、もっともっと日本の舞踊界が盛んになって欲しいし、そのために少しでも役に立てばと思っています。なぜこんなことをわざわざ書いたかというと、今回はもっぱら要望、注文を付けさせてもらうからです。つまり、舞踊界が盛んになるためには、多くの人に踊りを観にきてもらうことが絶対に必要だからで、この点もたびたび述べていることです。結果 としては、特定の分野、部分を対象としたように感じられるかも知れませんが、他意はありませんので、ご理解をお願いしたいと思います。
 私は普通の会社でしたらとっくに定年、でも実際には大学と両立させながら年間300回以上の公演をこなすほど(知力は別 として)体力には自身があると思っています。でも、この私でもいささかというか、実は大変参っていることがあります。
 それは一つは客席の条件です。私たちはできるだけゆったりと楽に舞台を観たいと思います。しかし、現実には箱を積んだような、しかも足を延ばせない狭いスペースに押し込まれたり、床の布団に座らされたりすることがよくあります。たしかに、大劇場を借りるお金がない、作品にも合わない、また観客もそれほど動員できないという公演もあります。そうするとどうしても条件の悪い小ホールを使わざるをえなくなります。そして現実にこのような公演は非常に多く、増加の一方です。
 前回のこのページにも書いたとおり、踊りたい人、作品を発表したい人が増えるのは大変結構なことで、そのための場が十分にあることが望ましく、東京では幸いにもこのようなスペースが増えているのです。
 ただ、上に述べたような条件では、若い人やそのアーチストのファンは気にしないのでしょうが、われわれ老人には大変きついのです。疲れて駄 目だと特定のスペースでの会は敬遠する人もいます。また、このようなホールの一部では、無理に詰め込まされたり、来た順に奥から座ってくれといわれることがあります。しかし、早く来た人から好きなところに座るか、あるいは席を指定すべきで、結果 として後から来た人のほうが観やすいところに席をとるということになっては公平とはいえません。実際に次のような経験があります。あるところで、早くから来ていて中央に席をとっていた初老の女性に、係員らしき人があとからお客さんがたくさん見えるから奥に詰めてくれといっていたのです。私は少しおせっかいでしたが、その人に詰める必要はありませんよ、後からきた人がいい席だなんて不公平だからといいました。とくに小さなスペースでは、端だと観にくかったり、奥に入ると終わった後出るのに時間がかかったりして条件がすごく悪いのです。
 私は時間さえあればこの様なスペースでの公演も観るようにしていますが、はっきりいって気が進まないのは事実です。
 小ホールでも客席に気を遣って、できるだけゆったりと観てもらおうと工夫しているところもあります。公演をするときは、できるだけそのようなところを使うようにお願いしたいし、主催者としてもお客さんに迷惑がかからないように気を配って欲しいものです。
 もう一つ老人に辛いことがあります。これは前にも書きましたが、プログラム(公演パンフレット)です。写 真などに重ねたり、白抜きの細かな字は正直読むのに大変な苦労です。別に豪華なものを作れというわけではありません。白紙にワープロで十分です。しかし、読みやすいこと、必要最小限の情報は記載されていることが必要です。これは比較的よくなってきたように思いますが、使用音楽の記載のないものは、意外と大きな公演にも見られます(不注意、著作権の関係?)
 これらを通しての基本は、これも度々取り上げていることですが、観客あっての芸術だということです。率直にいって逆に観客を芸術に奉仕させているような公演がときどき見られます。内容がいいのだから、あなたがたは我慢して観るのは当然、はこれからの世の中には通 用しません。非常に混雑して観客に迷惑をかけたり、あるいは開演が相当遅れたりしたら、まず謝ることはしてほしいのです(今回は内容のことはいいません)。
 芸術の質を判断するのは大変難しいのは事実です。しかし、若い人には決して少なくない代金を頂いているのですから、それに相当するものを観客に与えているかどうかを考えることは必要です。そこには客席の条件も入るのです。若い人、新しい人も、最初からすべてをきちんとは難しいとしても、入場料をとって公演するということは、まさに公の、すなわちパブリックな存在になったのだという意識をもって欲しいと思います。
 さらに付け加えますと、いつも気にかかっているタイトルの付け方です。これも若い人、経験の少ない人ほど、凝った、いいかえれば分かりにくい題名をつける傾向があります。内容と関係ないというだけでなく、失礼ですがご本人にも分かっているのかなというような、外国語を使ったり、明らかに文法上おかしいものもあります。先程のプログラムにも共通 するのですが、作品タイトルはまず作品内容や表現したいことを示すもの、それに沿ったものであること、その上でもし望めば芸術的、あるいは営業的な配慮をすべきです。
 実務的にも、あまり長いタイトルですと、批評を書くときに限られたスペースではどうしても取り上げにくくなるか、とりあげても作品名をカットすることになってしまいます。、あた、読みにくく、発音しにくく、あるいは覚えにくい作品名ですと、話題にしにくく、取り上げにくくなってしまいます。にくい話ですね。
 ここに述べた要望のうち、客席の条件についてはいろいろと難しい面もあると思いますが、要はまず「観客の立場で考える」ということです。是非この点、十分な配慮を期待したいし、観客の皆さんにも、どんどん要望を出すようにして欲しいと思います。
 日本の観客は舞踊だけでなく全体としておとなしいといわれます。これには良い面 もたくさんあるのですが、舞台内容、鑑賞条件を良くするための責任は観客にもあるというくらいの意識で自分の考えを率直に出すことも必要ではないでしょうか。
 直接主催者や劇場に言えないような問題があれば、このサイトに情報や提案を寄せて下さい。こちらで判断させていただいて、重要なものであれば(私が個人的に)必要な対処をしたいと思います。




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