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幕あいラウンジ バックナンバー

うらわまこと
 
Vol.43

「師走の公演ラッシュに走り回る

  活況なのはいいが、調整に大苦労」     
 
2001年12月3日
 

 もう、というか、あるいはいよいよか、21世紀初の年末月、師走です。自己流の解釈では、師、つまり人を導く立場の者も、走り回るくらい慌ただしい、忙しい時期ということです。私も教員の末端ですが、それとは別 に走り回らなければなりません。踊りを見るためです。12月の舞踊といえば、もちろん「くるみ割り人形」です。今、マジで「くるみ割り難行」と打ってしまいました。JIS配列では「な」と「に」は並んでいるのです。
 なぜ、「くるみ割り人形」が多いのか、それはまず、クリスマスパーティーが舞台となっているからですが、子供たちをたくさん出演させることができるのが、ファミリー向きであるとともに、営業的にもさまざまなメリットがあるからです。
 今年もクリスマスを中心に多くの「くるみ~」が上演されます。ただ、あまり重ならないようにと、すこしバラけてきたような気もします。
 私の知る限りで、12月の舞踊界を展望して見ます。やはり圧倒的に「くるみ~」が多いですね。大手、中堅のバレエ団のほとんどが上演します。ずらっと並べてみましょうか。
 東京地区では、松山バレエ団、牧阿佐美バレエ団は例年通り多くの回数をさまざまなキャストで。例年より少し早めた井上バレエ団、毎年同じ時期の東京シティバレエ団、バレエ・シャンプルウエスト。クリスマス前後にはNBAバレエ団が東京と近県で、同じくNSBバレエシアターが熊谷。日本のバレエ団の年末最後は大体毎年小林紀子バレエシアターです。松崎すみ子さんのピッコロでも独自のバージョンで。
 これ以外にも、多摩市バレエ連盟の多摩シティバレエ21は多摩で、橋本陽子さんのエコール・ド・バレエも宇都宮で公演をもちます。さらに雑賀淑子さんのサイガバレエ、鎌倉の鈴木和子さんのバレエ・アーツの公演でも、それぞれ独自の風味をもった「くるみ~」が見られるでしょう。
 名古屋も盛んです。松岡伶子バレエ団と越智實インターナショナルバレエが一週ずらして、ほかにもあると思います。神戸の貞松・浜田バレエ団は常連ですし、多分大阪でもどこかがやるのでしょう。福岡の田中千賀子さんのバレエ団でも20周年記念に「くるみ~」をとりあげます。
 それぞれに見所はありますが、とくに興味深いのは、まず牧阿佐美バレエ団が、20年以上続けたジャック・カーター版から新しく三谷恭三さんの振付した版に切り替えたこと、福岡の田中さんのところで、実際にはお嬢さんの若きエトワール、ルリさんが新しいアイディアで振り付けること、そしてつい先日松山バレエ団の団長に就任した舞踊生活50年の森下洋子さんのクララでしょう。他のバレエ団も新しいキャストを組んだりしてそれぞれ興味をひいています。これ以外にも各地で「くるみ~」の公演が行われます。
 一方、大手でも上演しないところもあります。東京では、スターダンサーズバレエ団、ここはピーター・ライト版があるのですが、やるのは夏休みの8月、また谷桃子バレエ団は東京では12月以外でもほとんどやらず、いつも暮れは新年早々の公演の準備で忙しそうです。新国立劇場では「シンデレラ」、この作品も家族向けの内容をもち、毎年このシーズンに多いのですが、今年は他にはあまりないようです。
 年末は舞踊界すべて「くるみ~」など、家族向け一色かというと、実はそうでもないのです。現代舞踊系も毎年この時期に多くの舞台があります。
 まず現代舞踊協会のアーツプラン21による現代舞踊公演、そして協会会長の石井みどりさん、折田克子さん母娘の公演、母と娘といえば「ダンス・パースペクティヴ」という6組の母娘の会があります。木佐貫邦子さんも久し振りに自分のリサイタルを開きます。新国立のコンテンポラリーダンスシリーズも、丁度今12月初めに行われています。竹屋啓子さんのグループ、宮下恵美子さんのクリエイティブネットワーク、そして多分初めての栗原宏之さん、森山開次さんも会を開きます。パークタワーのネクストダンスフェスティバルが森下スタジオで、また平多正於舞踊研究所もグループのリサイタルを。舞踏系も五井輝さん、そして大駱駝館の新人による創作公演もこのところ順番に。大阪のダンスボックスでも新人の4公演。また神奈川ではヨコハマ・コンペティションも行われます。
 バレエ界にも意欲的な公演があります。佐多達枝さんの合唱との共演シリーズが今回は「カトリーナ・カルミナ」ほか。バレエ協会の神奈川ブロックでは「眠れる森の美女」を豪華なメンバーで。名古屋ではユニークな作品を作っている川口節子さんのバレエ団が「舞浪漫01」として彼女の作品を発表しますし、海外で活躍している三代真史ジャズ舞踊団も本拠地で凱旋公演、さらに北川淑子さんも作品を発表します。こうみると名古屋の活発さが目立ちます。京都では宮下靖子バレエ団が今年は深川秀夫さんの「ドン・キホーテ」を上演します。神戸では藤田佳代さんのお弟子の金沢景子さんのリサイタルもあります。
 フラメンコにも12月の常連がいます、佐藤桂子・山崎泰スペイン舞踊団はずっと、紫綬褒章を受けた長峯ヤス子さんも最近は12月(小島章司さんは毎年11月末です)。

 これらは12月の舞踊のスケジュール表から全部取り出したように見えるかもしれませんが、実は2日現在ご招待いただいたものだけなのです(もし抜けがあったらごめんなさい)。お招きいただいていないのも、同じくらいあるのではないでしょうか。
 ここに挙げただけでもう40公演を超えています(さらに日本舞踊や演劇、音楽もあるのです)から、物理的に全部は見られないのははっきりしています。さらにこの多くが土日に集中しているのです。したがって忘年会は全部キャンセルして踊りの会だけに専念しても、見られるのは半分強、キャストを全部見ようなどというのはとんでもない話になっています。舞踊界が盛んなのは大変ご同慶の至りですし、お招きいただくのはとても有り難いのですが、現実には調整に大苦労です。それぞれが頑張っておられる興味ある舞台ですので、できるだけ多く拝見させていただきたいのです。そのためには、お客さんの関係で休日に集中するのはやむをえないかもしれませんが、こちらのお願いとしては、土日祭日以外の公演も考えて欲しいこと、また休日はたとえば2~3時か6~7時にしていただくと(ゲネプロの関係などで4時開演というのもやむをえないのでしょうが)、どちらも見ることができるのですが、無理なお願いでしょうか。




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