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ニュース・コラム

幕あいラウンジ バックナンバー

うらわまこと
 
Vol.47

「活発な地域単位の舞踊団体の活動

  ーわが国舞踊界の基礎を支えるー」
 
2002年2月06日
 
 日本の舞踊界は、東京、名古屋、そして京阪神を始め全国各地にいくつかの有力な団体(バレエ、ダンス、ブトー、フラメンコなど)が並立している、いわばそれぞれの高さ、大きさは多少違っていますが、山脈があちこちにあるという状態です。これは諸外国の、各地(都市)にひとつあるいは少数の高い見事な山(舞踊団や学校)がそびえているという富士山状態とは大分異なっています。これらの山々は、平成新山(新国立)を除いて国有でなく民有地です。しかも、わが国では小さい山もしっかりと肩を組んで、簡単に崩れないどころか高い山に負けない魅力を見せることもあります。
 これがいわゆる協会とか連盟と名付けられたものであり、さらにこのなかにブロックとか支部というちいさい山並みがあります。これらの山並みがあるからこそ、高い山頂もその姿を誇っていられるのです。
 この、いわば地域密着型の小山や丘の集団は、上に挙げたように人材面、市場面 、さらに経済面、時には芸術面でもわが国の舞踊山脈の基礎をしっかりと支えているのです。

 2月の初めにこの地域密着型の集団の舞台を見る機会が2度ありました。2日の松戸芸術舞踊協会新人公演(第11回)と、翌3日の(社)日本バレエ協会関東支部栃木地区の20周年記念バレエ・コンサートです。この2つはともに地域に根付いた組織ですが、その形態は大分異なっています。まず松戸は市単位 の独立組織で、バレエ、モダンとジャンルを問いません。それに対して栃木は全国組織の地方支部のなかの県単位 の地区という位置付けで対象(会員資格)はバレエ関係者ということになっています。さらに松戸はスタジオ単位 、一方栃木はバレエ協会の規定により、個人単位の参加です。
 この2つがスタンダードで松戸方式では県単位、また東京では区単位の組織もあります。さらにバレエ連盟、舞踊(洋舞)連盟という名称の組織もあり、特別 のものとしては、公的に日本バレエ協会に対応するものとして4つのバレエ団による東京バレエ協議会、さらに新しい形として昨年NPOとなったJCDN(ジャパン・コンテンポラリー・ダンス・ネットワーク)があります。
 このように名称だけでなく組織形態も様々で、具体的な活動内容や運営はそれぞれ独自のものがありますが、大きな視点からは上に述べたように、日本の舞踊界を基礎で支えているのです。

 話を戻しましょう。松戸芸術舞踊協会は会長が本間祥公さん。過去に文化庁芸術祭賞を受けたこともあり、昨年末の新国立劇場の主催コンテンポラリー公演でも主役を踊るなど、現役のスターダンサーです。今回は昨年11月に実施した新人オーディションの合格者の披露と、中学以下と高校以上のグループによる創作上演で、ともに堀登氏振付けの新作が発表されました。創作グループのシニアの部はクラシック、モダンのダンサーが混じっていますので、振付けもなかなか難しいのですが。堀氏は現代的な感覚の動きに、構成、照明で味をつけて旨くまとめていました。このようにバレエとモダンダンスの両方を含む団体では、合同出演の時には作品に制約が生ずるというやりにくさがありますが、両方のダンサーの交流ができますし、スタジオ単位 で作品を出品する場合には、プログラムに変化がつけやすくなります。またその地区の舞踊界が結集しているわけですから、支援、助成を受けやすいというメリットもあります。この辺を本間会長は市長を顧問にしたりしてうまく運営しているようです。
 一方栃木地区は、日本バレエ協会の下部組織ですから、バレエ関係という制約があります。しかし、委員長の橋本陽子さんは、純クラシックにこだわらずにコンテンポラリーを加えて柔軟にプログラムを組んでいます。とくに藤田真砂子さんなど毎年現代的な感覚の作品を発表しています。今年は20周年ということでダビッド・リシーンの『卒業舞踏会』を日本バレエ協会本部の指導のもとに上演しました。男性は赤木圭、比嘉正、堀内充、大倉現生氏など一流をゲストに迎えていますが女性は地区のメンバー。第1、第2ソロの鈴木直美、長谷川祥子さんはじめ全員が役を楽しみ、見事なアンサンブルで素晴らしいできでした。観客も大変喜んでおりましたが、地区のレベルアップにも役に立つ貴重な機会でした。
 3月3日には栃木地区の上部組織の日本バレエ協会関東支部の20周年の記念式典、さらに4月1日には、県単位 の松戸方式、すなわちバレエ、モダンを含む埼玉県舞踊協会の創立35周年記念祝賀会が行われます。
 関東支部は現支部長は田中元子さん、関東6県から成り、本部直轄の東京と並んで多数の会員を擁する有力支部で、バレエ協会の活動、各地域の活動に大きく貢献しています。
 また埼玉県舞踊協会は藤井公会長の下、全国的な規模をもつコンクールを始め毎年多彩 な活動を続けており、地域の舞踊文化の形成、向上に大きく貢献しています。
 わが国の状況からみて、このような民間の組織は、ここ暫くは地域だけでなく国全体の舞踊の振興に重要な役割を果 たすものと思われます。経済面など舞踊界をとりまく状況はますます厳しくなりますが、ぜひ頑張って欲しいものです。



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