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ニュース・コラム

幕あいラウンジ バックナンバー

うらわまこと
 
Vol.49

「舞踊への関心と興味をより高めるために

  だれにでも身近なものとするための企画、工夫を
 
2002年3月05日
 
 昨年の暮にもこのページでちょっと書かせてもらいましたが、公文協の「舞台芸術フェア・アートマネジメントセミナー2002」におけるレクチャー付きバレエ・ダンスコンサート『“若きエトワール”たちによるクラシックバレエからコンテンポラリーダンスまで』が、お陰様で無事終了いたしました。これについての感想を述べてみたいと思います。
 まず公文協とは、社団法人全国公立文化施設協会の略で、全国に2千余りある公立文化施設(ホールなど)のうち約7割が加盟している組織です。その本部事務局に芸術情報プラザというセクションが、文化庁の委託をうけて公立文化施設の活性化のために設置されており、いろいろな分野の専門家がアドバイザーとして配属されています。アートマネジメントセミナーのその仕事の1つで、私も舞踊関係のアドバイザーとしてたてた企画がこれなのです。
 残念ながら公立文化施設のなかでは音楽や演劇、さらに伝統芸能と比べて舞踊はまだポピュラーとはいえません。これはホールの企画担当者の認識の問題でもあるでしょうが、舞踊サイドのPR、働きかけの弱さもあると思うのです。たとえば、このフェアの一環として資料展示、ビデオ上映のコーナーがあるのですが、音楽や演劇関係者の熱心さにたいして、舞踊関係者の少なさは明らかです。もう一つ、各地の企画担当者から舞踊に関する問い合わせがたまにあるのですが、そのほとんどが外来のバレエ団についての情報確認なのです。私はその時には、国内にもいいバレエ団がたくさんありますよということはいっているのですが、これはつまりは外来(とくに旧ソ連系が多い)のバレエ団の営業活動の激しさを示しているといえます。
 それで、私も微力ながら機会をとらえて舞踊に興味と関心をもってもらおうと努力はしているのですが、私のやり方が悪いのか、公立文化施設の方々の舞踊に対する関心はあまり高まりません。今回の企画も外部の方々からはお褒めをいただいているのですが、肝心のセミナー対象者の反応は芳しくありませんでした。もちろんある程度の数の研修生には受講していただき、それらの方々には厚くお礼申し上げますが、これが公文協における舞踊の評価であるかと思うと、少々寂しい気持ちになったのも事実です。
 でも今ここで落ち込んでいても仕方がありません。気をとりなおして当日の模様を報告しましょう。
 セミナー受講者は少なかったのですが、ホール(国立オリンピック記念青少年総合センター・大ホール、客席約700)を埋めるためにいろいろな方の協力をいただき、なんとかかっこがつきました。客席が寂しいと出演者も乗りにくいし、そうすれば見ている人にも影響が及びます。
 このコンサートの目的は、受講者に舞踊に関心をもってもらい、企画に含めてもらうことですから、まずチャーミングで素質にあふれた新進ダンサーがたくさんいること、いろいろなスタイルの舞踊があり、それぞれに特徴があること、を知ってもらうことです。そしてもう一つ、若者に単なる公演だけでなく、総合的に舞台芸術に触れ、理解してもらうために新しく始まった舞台芸術総合体験事業(旧移動芸術祭、ふれあい体験事業)の参考になるように工夫しました。
 それが踊りの合間に挟んだ舞踊のスタイルや作品についてのトークであり、そこで出演者の出身地を明らかにし、各地から集まった施設関係者にアピールしたことであり、もうひとつがリハーサル公開です。リハーサルの公開は、8つの団体、グループから出演をお願いしたため、全員の顔合わせも、この舞台で踊るのも当日が初めてであり、その点で出演者も指導者も大変やりにくかったと思います。それにもかかわらず皆さん快くその趣旨に賛同してくれて、ガナリマイクを使って真剣なリハーサルを見せてくれたのには本当に感謝いたしました。とくにブトー(舞踏)の大駱駝艦がわざわざこの会のために磨赤兒氏が振鋳(振付)した作品を出してくれて、最後の仕上げをここで行ったのは、私も大いに参考になりました。いずれにしろ、リハーサルと本番の両方を見ることによって、舞踊の舞台というものへの理解も興味も高まったのではないでしょうか。
 あえて押しつけ的にいわせていただければ、クラシック、モダン、コンテンポラリー、そしてブトーと、なかなか一緒の舞台にたつ機会の少ないメンバーが一同に介したのは、そしてさらに昨年スタートしたばかりの新国立劇場のバレエ研修所が新国立劇場以外のところで実情と研修生の1年間の成果 を見せてくれたのは、客席だけでなく、舞台や楽屋裏でもいろいろと意味があったのではないでしょうか。また、一部トップダンサーの出演もお願いはしましたが、多くの若手ダンサー(クラシック、モダンでは約半数が20歳以下)にとっていい経験になったことを願っています。
 いずれにしても不十分な条件のなかでベストの役割を果たしてくれたダンサー、指導者、ダンスミストレスの本間祥公さん、そして舞台監督の森荘太さんはじめスタッフの方、さらに大変な無理を聞いてくれた公文協の皆さんに心からお礼を申し上げます。
 このちょうど1ヵ月前には、伊予田バレエスタジオの『楽しいバレエのお話と「白鳥の湖」より第3幕』公演で、ダンサーを使ってバレエの作られ方、楽しみ方、そして作品の見所解説を行いました。これと合わせて,再三このページで述べている舞踊におけるエイジフリー、キャリアフリー、バリアフリー、エリアフリーの実現と、バレエやダンス観客の増加に少しでも役にたてば大変嬉しいことです。       



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