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ニュース・コラム

幕あいラウンジ バックナンバー

うらわまこと
 
Vol.62

「「バレエ」コンクールと「コンテンポラリー」作品

 
日本バレエ協会のコンクールで感じたこと」
 
2002年9月19日
 

 わが国の舞踊コンクールは、その数も参加者も全体として増加し、隆盛を見せています。ただ、その時期には条件というか傾向があります。それは学校が休みの時に集中しているということです。春休みと夏休み、冬休みなどの期間です。これは学生、生徒が参加者の大半を占めていることからも当然といえるかもしれませんが、コンクールが真にプロの登竜門であるとすれば、学校が休みかどうかはあまり関係ないような気もします。しかし実際には、若年者の多いこと、そして平均的なレベルからみて、わが国の場合、コンクールは、自分の力を試す、努力の目標とする、さらに踊りを皆に見てもらう機会とする、といった意味が強いようです。
 そのなかで異色なのが15回を数える日本バレエ協会の主催する『全日本バレエ・コンクール』です。他のコンクールのほとんどが、予選、(準決選)、決選と同じ一曲を踊るだけで、審査され、選出され、順位 が決まるのに対して、このコンクールでは予選の・、・、準決勝、決勝と4段階に別 れ、その間に、リハーサル、アンシェヌマン、2種類の古典のヴァリエーション、そして創作作品を踊らなければなりません。つまり多面 的、総合的な審査、評価を経て、順位が決まるのです。しかも、協会の各支部を経由しての参加の段階で、選別 が行なわれる場合もあるということです。また演技の直後に、技術点と表現点、そして総合点がコンピュータによって表示されるという厳しさです。
 この審査方式は海外のコンクールにも遜色ないものであり、参加年齢も13歳以上、さらに賞も限定され、1位 とそれ以下との賞金などの差が大きいのも特色で、それが権威の裏付けとなっているといえます。

 ここでとくに目をひくのが『創作』作品を踊るのが条件であるということでしょう。たしかに、これからのバレエダンサーは古典だけでなく、現代作品も踊れなくては一人前とはいえません。とくにコンテンポラリーといわれるジャンルには、クラシックとはそうとう違う動きと表現のセンスが要求されます。この面 からもこのコンクールは、将来のプロ、舞台での活躍をめざす若者のためのものであるということが感じられます。
 この創作作品では、初めのころはまさに「古典スタンダードでなく、新たに作られた」作品というだけで、感覚やステップは古典そのままというものが多くみられました。しかし、最近では佐多達枝、望月則彦、上田遥、島崎徹、矢上恵子といった、創作バレエ、コンテンポラリー系の振付者がきちんと名前を出して作品を提供するようになってきました。たしかに、こういった人たちの作品は見応えがあり、それだけで楽しいものがあります。

 ただ、今年の審査状況、結果を見ていて、ある疑問を感じました。それをまとめていうとそれぞれの審査項目のウエイトの問題です。たとえば決勝では古典、創作、アンシェヌマンが踊られます。それぞれに採点がなされますが、それは3分の1づつの配分になるのか、そうではないのか、ということです。これは発表されていないようですが、一般 にはそれぞれ同じウエイト、つまり単純に3種目の合計点で順位が決まると思われているようです。
 とくに、古典と創作の関係はどうでしょうか。たとえば、古典のヴァリエーションは素晴らしい出来栄えだったが、バレエシューズ、あるいは素足の創作は十分に力を発揮したとはいえなかったものと、創作は見事に踊ったが、古典の出来はいまいちだったものとどちらをとるかです。これからは古典と創作とは区別 すべきでないと考えれば、単純に合計して点数の高い方が上になります。しかし、バレエのコンクールなんだ、ということにこだわれば、まず古典がきちんと踊れなければならないという考えもありうるのです。
 現実、アンシェヌマンはクラシックを基準にしていますから、これと古典、創作を同等に扱えば、クラシックにウエイトを置いていることになります。古典、コンテンポラリーの課題曲、そして自由の種目をもつローザンヌコンクールなどではどうなのでしょうか。ご存じの方は教えて下さい。
 もちろん、すべてに優れていることが望ましいのはいうまでもありませんが。

 もう一つ、今年の結果をみて感じたことがあります。それは四国勢の進出です。
 ジュニアでは1、2位、シニアでも1位が四国支部からの参加でした。シニアは1人参加でそれが1位 、逆にジュニアではとくに女子は91名中22名、約4分の1が四国支部からの参加でした。さらに創作作者についても、望月則彦、竹内登志子、堀登、松崎えりに外国人も、といったユニークな顔ぶれで、ここからも力を入れていたことが分かります。
 支部としてこれにどれだけ具体的に関与したのかは分かりません。しかしこれを見て、うちでも優れた若いダンサーを発掘し、きちんと育成するシステムを考えなければ、と考えた支部があるようです。
 コンクールが最終目的ではないことは当然ですが、それを手段、あるいは中間目標として、広く地域の優れたダンサーの育成にリーダーシップを発揮しょうという支部がでてきたのは、大変に望ましいことと思います。個々のバレエスタジオの特性を生かしながら、それらを組織化することは、少子化の時代にますます必要になります。それを地域の特性のもとに進める主体としては、支部がもっともふさわしいと思うのです。




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