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ニュース・コラム

幕あいラウンジ バックナンバー

うらわまこと
 
Vol.65

「バレエ・ダンス日本列島

 
各地で頑張るユニークな舞踊家たち」
 
2002年10月30日
 

 芸術の秋、文化庁芸術祭もたけなわです。10月の10日間大阪、その後1ヶ月東京で行われるのです。ほとんど毎日ですが、参加公演だけを見ていればいいというわけにはいきません。それ以外にも多くの舞台があります。これもできるだけ逃さないようにしなければなりません。といってもその調整は大変なのです。残念ながら随分見られないのが出てきてしまいます。
 今回は、そのような調整がなんとかついた公演のなかから、小粒ながらきらりと光る、ユニークなものを取り上げてご紹介しようと思います。これは全部芸術祭参加公演の合間(狭間)に見たものです。
 森嘉子さん
 まず10月1日、関東に台風が荒れた日です。毎月1日にティアラこうとう小ホールで行われている舞踊作家協会の連続公演「伝統と創造」。この日の芸術監督は森嘉子さんと花輪洋治さん。森嘉子アフロダンスグループに花輪さんが特別 出演した舞台です。森さんはアフロアメリカンダンスの第1人者、一昨年の文化庁芸術祭の大賞も受賞しています。今をときめく花輪さんも大昔、森さんの振付でショウで踊っていたことがあったとのこと。久し振りの共演で、花輪さんも自作を自演で披露しました。この会の特色はもう一つ、外山喜雄とニューオリンズ・セインツのデキシーランドジャズの特別 参加です。外山さんはトランペッターであるとともに、歌もうたいます。まさにルイ・アームストロングと同じで、レパートリーもルイのものがほとんどで、「What a  wonderful world」など、声だけではルイと区別がつかないくらい。そのジャズバンドの音楽とダンスのライブの共演というか、コラボレーション。ニューオリンズ(デキシーランド)ジャズはアフロアメリカンの心の叫びであるブルースとともに、ハッピーミュージックといわれるアップテンポの楽しいものも多いのです。ダンスもハッピー、のりのりの舞台でした。台風にもかかわらず多数のお客さんが舞台と一緒になって楽しんでいました。私ももちろん。実は私とデキシーランドジャズとの出会い、付き合いは舞踊よりはるかに長く、熱いのです。こんな嬉しい舞台を再現しないでかと、来年2月に某所でのライブを計画しています。決定したらこのページでも明らかにします。
 藤田佳代さん
 次は神戸の藤田佳代さん(10月5日)。モダンダンス系ですが、自分のリサイタルでもちょっと変わった感覚でユニークな作品を作る人です。たしかにモダンダンスの発表会で、小さいこどもたちもたくさん出演するのですが、決して年齢やレベルあわせて作品を作るということをしません。ファンタジックな作品ではあるのですが、音の取り方など並大抵の難しさではありません。ユニゾンではまったく合わず、複雑な隊型構成もどれが正解か分からないほどの混乱。規制より自由に、ということでもあり、またまさにライオンがこどもを崖から突き落としたという感じ。ここからはい上がってくると、真に主体性と個性のあるダンサーになるのでしょう。
 ここには知的障害者舞踊家の星、安田蓮実さんがいます。彼女は昨年の北九州のコンクール、バリアフリー部門でチャレンジャー(最高)賞を受けています。この日も同年輩の仲間のなかでもしっかりと踊り、むしろリーダー的立場で頑張っていました。彼女は来年リサイタルを開くとのこと、成功を祈り、応援したいですね。
 山崎敬子さん
 7日には東京(練馬文化センター)で、バレエの山崎敬子さんの主宰する石神井バレエアカデミーの公演がありました。彼女はご存じの方も多いと思いますが、松山バレエ団の幹部です。
 貞松正一郎さんはじめ、久し振りの三浦敏幸さんなどの松山OB、NBAバレエ団などから多くのゲストが参加、さらに松島勇気さん、名古屋からの窪田弘樹さんなど豪華な顔ぶれ。作品も、近々誕生が予定されている貞松夫妻の赤ちゃんのための、「眠れる森の美女」の妖精の音楽を使った暖かく、しかもモダンな「フォー・ミカ」(ミカは正一郎さんの奥さんの名前)、男性たちがかっこよく踊り、自己を主張するピアソラによる「一枚の絵」。そして非常に親しみやすく、しかも組合わせの見所が多くいろいろなダンサーに踊ってもらいたいアダジオ作品「ナイチンゲール」など、しゃれた感覚の見応えある小品集でした。全体のプログラムもなかなかバランスがとれています。  たしかに出演者の力も重要ですが、振付、その前の作品のアイディアが大事だということを強く感じさせた会でした。
 秀和代さん
 今回の最後は、20日名古屋の芸術創造センターでの秀和代さんが主宰するヒデ・ダンス・ラボ公演ダンス・ミーティング・コレクション2002の「奇妙な男のワルツ」です。彼女は10年以上前からスタジオを開き、ニューヨークやカナダで学び、また作品を発表したりしています。日本でも何回かリサイタルをしているのですが、今回初めて拝見しました。秀さんとそのスタジオメンバーにくわえて協力者がいるのですが、その顔触れがユニーク。振付の村越直子さんは、カナダでGoh Ballet Companyで学び、海外でダンサー、振付者、ディレクター活動、ヨーク大学の講師でもあります。主役を踊ったGraham Mckelvieさんは、トロント・ダンス・シアター所属、カナダ、アメリカ、日本で活動しています。その相手役谷洋子さんはカナダナショナルバレエ学校で学び、その後東京シティバレエ団、さらにドイツを基地にヨーロッパで活動、フォーサイスのもとで振付を学んだりしています。名古屋の世界バレエ・モダンダンスコンクールのファイナリスト。
 ここでのキーワードは「カナダ」です。さらにいうと島崎徹さん。事実マッケルビーさんは島崎さんの作品「Feathers」などを東京やカナダで踊っているし、皆さん面 識が深い。たしかに見ていてどっかで見た動き、アダジオだなと思っていたのですが、キャリアを聞いて納得。真似ではないにしても主役2人の部分は完全に島崎ワールドでした。  名古屋はクラシックはとても盛んでレベルが高く、現代舞踊や新作バレエ、ジャズダンスもたまに見られるのですが、このようなバレエ系のコンテンポラリーはほとんどありません。それだけに貴重な存在だと思います。
 以上、それぞれしっかりやっているな、という思いひとしお。




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