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うらわまこと

Vol.72

ますます盛んになる「合同」公演 
      ー生き残り、発展のための努力ー」

2003年2月19日

 例によって今年も新年から舞台漬けですが、1か月半を経過して自分でこんなことに気付きました。それを日程順に並べてみます。まず日本バレエ協会神奈川ブロック、現代舞踊協会(都民芸術フェスティバル)、世田谷クラシックバレエ連盟、DANCE FREE、舞踊作家協会、バレエ連盟TAMA、日本バレエ協会(都民芸術フェスティバル)、新宿芸術家協会、バレエグループあすなろ、埼玉 県舞踊協会(Early Spring Concert)、そして京都文化財団(創造空間2003)。
 ここからなにを感じるか、共通の要素はなにかということです。もうお分かりでしょうが、これは全部メンバーが固定的な団体でなく、協会、連盟のようにいろいろな団体や個人が集まって組織されたものです。つまり、いろいろなメンバーが合同して公演をもつものです。
 ここには社団法人のように法律で定められているものから任意の一時的なもの、また加盟団体や個人が別 々に作品を発表するケース、オーディションなどで選ばれたダンサーがひとつの作品に出演するケースなど、いろいろな方法、性格があります。
 このような団体、あるいは公演が多いのは、わが国独特の形だと思います。なぜこうなるかというと、海外のように劇場に専属する団体がなく、多数の民間のフリー(劇場をもっていない)の団体(舞踊団やスタジオ)によって舞踊活動が行われているからです。これらが合同するのは日本人特有の”群れたがる”国民性もあるでしょう。さらに、とくに中小の団体では、芸術的にも経済的にも自分ところだけで自主公演をするのが難しく、合同公演の形で作品を発表したり、団員やお弟子さんたちに舞台の機会を与えたりする必要性が生まれてくるからです。もちろん、合同団体ができれば情報交換もやりやすくなるし、外部への発言力が強くなることも確かでしょう。実は合同という形をとっていなくても、一時的に振付者が多くのゲストダンサーを集めて行う公演はきわめて多いのです。
 ここではまずユニークな団体に焦点を当ててみましょう。
 京都文化財団のケースは、「京の舞台芸術新生事業」の一環として、「オンディーヌ」公演のために集まったものです。なぜオンディーヌかというと、これは京都で行われている「世界の水フォーラム」が協賛しており、テーマに「水」にかかわるものを選んだからです。もう一つこの公演の特徴は、望月則彦さんが全体の演出を、そして3幕の振付は今中友子、小川珠絵、高安マリ子の3人のかたがそれぞれ担当していることです。
 フォーラムの目的が水の重要性を認識し、それを守ろうというところにあるせいでもないでしょうが、「オンディーヌ」のストーリーも大分変わっていて、水の世界に戻ったオンディーヌを追ってハンスも水の世界にやってきて、そこにはいろいろありますが、最後は2人が幸せになるというものです。こうするにはもう少し前半に伏線があったほうがよかったとは思いますが、これも一つの解釈でしょう。テクニック的にはモダンな作品ですが、30名のダンサーたちもクラシックからモダンまで幅広く、それぞれにいい勉強にもなったと思います。これは一時的な団体ですが、主催が京都府であり、会場が府立府民ホールアルティというのが特徴です。
 つぎに特徴的なのはバレエグループあすなろです。これは3つの名古屋の中堅バレエ団、岡田純奈、鳥居ゆき子、川口節子バレエ団によるもので、結成10年、2年に1回の公演で第5回目です。ここは2つの作品、クラシック(「リーズの結婚」)と創作(ストラヴィンスキーの「Les Noces」)に合同で取り組んだものです。「リーズの結婚」は岡田、鳥居さんの指導で、抜粋ですが、日本でよく見られるアシュトン版ではなく、ゴルスキーのロシア版で、最後のグラン・パ・ド・ドゥまでうまくまとめていました。公門美香さん、窪田弘樹さんも若々しくいい味をだしていました。ストラヴィンスキーは、日本でも「結婚」という名でよくしられている音楽で、ニジンスカやプレルジョカージュさんの振付で知られています。川口さんの振付は、素足にヒールつきのシューズ、どちらかというと後者に近いかもしれませんが、彼女独特の解釈と動き、空間構成で、優れたセンスをもった振付者だということを証明しました。桐村真里、近江貞実さんはじめダンサーたちも難しい音楽、動きによく挑戦していました。なお、タイトルを原語にしたのは、前の「リーズ~」と [結婚] が並んでしまうからで、実際にはテーマを統一しているのです。
 もう1つ紹介しておきましょう。新宿芸術家協会です。これは新宿に関係のある舞踊家、指導者によって組織されており、三輝容子さんが代表をつとめています。設立13年目、最初はセミナーをやっていましたが、最近は公演、今回は第6回です。ここは、個々の会員が作品を発表するのですが、前々回から使う音楽にテーマを決めています。まずバッハ、そしてビートルズ、今回は日本人の作曲によるものです。この基本テーマのもと7作品が上演されました。日本人の音楽といっても、レクイエムから津軽三味線まであり、ダンスもコンテンポラリーからモダン、フラメンコまでなかなかバラエティに富んでいました。またフレッシュ・コンサートとして新人に機会をあたえるのもここの特徴です。
 ほかの公演のなかから要点だけを取り出してみます。DANCE FREEは参加作品を募集するもので各地から現代舞踊5作品が集まりました。また埼玉 県舞踊協会は、会員の作品と合同作品があり、今回は佐多達枝さんの「a fig leaf」が上演されました。会員の創作は6つ、クラシックとモダンが3作づつで、なかなかバランスがとれています。ここでも協会主催のコンクール入賞者の披露があり、はつらつとした踊りをみせました。
 あとは現代舞踊協会が田中泯、森嘉子、飯塚真穂、坂木眞司さんという傾向の異なった作品。バレエ関係は、神奈川とTAMAが「白鳥の湖」、世田谷とバレエ協会が「くるみ割り人形」という面 白い結果になり、それぞれ演出や出演者に工夫をこらしていました。
 また舞踊作家による団体、舞踊作家協会は毎月芸術監督を決めて公演を行っていますが、バレエ、モダンから日本舞踊まで幅広く、その芸術監督の考えでいろいろな形がとられるのでこの意味でも大変興味があります。この月は尾上菊之丞さん、新井雅子さんの芸術監督で、「雪の輝き」という共通 タイトルでバラエティに富んだ7作品と、昨年の新人賞3作品が上演されています。今月はまだ練馬、宇都宮や静岡で形は異なりますが合同公演が行われます。もちろんそれ以降にもいろいろな形の合同公演は盛んです。また協会などの団体でコンクールを主催するというケースも増えてきました。
 こうしてわが国の舞踊界は、恵まれない状況のなかで、芸術レベルを高めるため、また舞台の場を広げるため、さらに新睦と団結を深めるために、いろいろな努力をしているのです。ぜひ見にいって励ましてあげて下さい。

 




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