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ニュース・コラム

ロンドン在住・實川絢子の連載コラム「ロンドン ダンスのある風景」

ロンドン ダンスのある風景

Vol.1ブルーベルの森

 5月から6月にかけては、英国が最も美しい季節といわれている。なかでも私の好きなのは、新緑の緑に青い花の咲き乱れる5月初旬。英国の春は水仙の黄色に始まり、次に桜などの花のピンク色で染まった後、みずみずしい新緑の緑と共にロマンティックなブルー系の花が顔を出して初夏の訪れを告げる。
 玄関のドアの周りをぐるりと囲った薄紫色の藤、香り高いライラック、Forget-me-notの名前で親しまれる忘れな草など、ロンドン市内でもあちこちで見かけるブルー系の花の中で、この季節最も人気があるのが、ブルーベルと呼ばれる釣鐘状の可憐な花。

 森一面に咲く野生のブルーベルは「青い絨毯」とも称され、わざわざ郊外の森までその幻想的な光景を鑑賞に行くツアーも組まれるほど。
 ロンドンで一番有名なブルーベルの森は、おそらくキュー王立植物園(通称キュー・ガーデン)のものだろう。
 入場料13ポンドはいつ来ても高いと思うのだが、今回はブルーベルの海を見るだけでも、その価値は十分にあった。

ブルーベルの森
 「シャーロット女王のコテージ」と呼ばれる藁葺き屋根の小屋の裏に広がる青い絨毯は、まるで絵本の一場面のよう。「夏の夜の夢」の妖精が出てきてもおかしくないと思ってしまうほど神秘的な光景に、思わずため息が漏れた。
 ブルーベルを鑑賞した後は、昨年出来たアトラクション、ツリートップ・ウォークウェイへ。
 テムズ川沿いの観覧車ロンドン・アイの設計をした建築家マークス・バーフィールドが 設計した、地上からの高さ18メートル、長さ200メートルの遊歩道で、鳥が高い木の枝に止まったり、巣のなかにいる気分といった感覚を体験できる。
 階段を上まで上るのはなかなかきつかったが、さっきまで地上から見上げていた大きな木を、 上から見下ろしたり、木のてっぺんからまた別の木のてっぺんへ、鳥が移動するように 移動するのはとても新鮮な感覚だった。
 この日は連休中、しかもいい天気だったので、キュー・ガーデンも人が沢山。ロンドンの中心部からは少し離れているが、都会の喧騒に疲れたら、癒しを求めて訪れる価値大の場所である。
實川絢子
實川絢子
東京生まれ。東京大学大学院およびロンドン・シティ大学大学院修了。幼少より14年間バレエを学ぶ。大学院で表象文化論を専攻の後、2007年に英国ロンドンに移住。現在、翻訳・編集業の傍ら、ライターとして執筆活動を行っている。