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ニュース・コラム

山田マミのやっぱり、パリが好き

山田マミのやっぱり、パリが好き

フランス・パリ在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、パリっ子たちの日常生活も、
山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!

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5月1日 スズラン

5月1日と言えば、スズランの日。4月に春を告げる黄色い水仙の花を売る人が街に立つようになって、そのあとにリラの花を売る人を見かけます。街頭で勝手にものを売るのは禁じられているようですが、5月1日のスズランは、なんと誰でも売ってよいのです。が、規則があります。花屋さんから60メートル以上離れたところでなくては売ってはならないとか、ちゃんとテーブルの上に展示しなくてはならないとか。それから、根っこなし、包装なし、植木鉢なし等といろいろあるようです。こんなに規則が厳しいのは、不況から花屋さんを守るためらしいです。

5月7日~30日 ランコントル・コレグラフィック・アンテルナシオナル・セーヌ・サン・ドニ(旧バショレ国際振付けコンクール)

ランコントル・コレグラフィック・アンテルナシオナル・セーヌ・サン・ドニ(旧バショレ国際振付けコンクール)が今日5月7日から始まりました。パリ市の隣の93県で催されるダンスフェスティバルで、今年の会期は5月7日から30日まで。開幕はいつもボビニーのMC93劇場。

ダンスをあまり上演しなくなってしまったこの劇場には、1年に1回、このフェスティバルの時にだけ行くのですが、郊外の開発が進んでいるようで、劇場横にあったちょっと寂れた公園がなくなって、マンションが建設されていました。住居の問題は大切だけれど、また一つ緑の場所が消えたのかと思うとなんだか寂しくなります。

93県=治安が悪い=行くのが怖い、という構図になりがちですが、メトロで行けない劇場へはパリ市内から無料送迎バスが出ているので安心していけます。(要予約)
では、郊外の劇場をちょっと紹介します。これはフィリップ・ドゥクフレの本拠地で、

LA CHAUFFERIE(ラ・ショフリー)と言います。この建物は1952年に建設され、長いことサンドニ市に熱源を送っていた工場でした。1993年にサンドニ市長がドゥクフレに場所を提供して、現在に至るのです。内部は改造されましたが、昔のメーターや計器類がまだ残っています。

「文化は危機に面している」のポスターがあちこちに。
不況で真っ先に予算が削られるのが文化なのは、どこの国も同じ。そしてマイナーな部類に入っているコンテンポラリーダンスはまともに影響を受けるのです。ああ、80年代にフランスがコンテンポラリーダンスで世界を制覇したのは、今やもう夢の跡、、、。

この劇場は、エピネイ・シュー・セーヌにあるMAISON DU THEATRE ET DE LA DANSE。郊外に行くと建物の趣も変わります。

郊外の劇場には無料バスで行くと決めているので、この劇場が地図の上でどこにあるのかさっぱりわかりませんが、とにかくパリの北の方。無料バスの待ち合わせ場所は、メトロ13番線のMAIRIE DE ST-OUENでした。

これがサン・トウアン市の市役所です。なかなか立派な建物で、古い映画に出てくるような建物ですね。

近くにはこんな建物もあって、昔は高級住宅街だったのではないかと思います。

が、ここから少し離れると、
路上を歩く人もまばらで、なぜか男性ばかり。鉄筋の建物の横はプレハブのしかも真緑の建物。
これは人家ではなくて、工場だと思いますが、色をなんとかしてほしい。。。パリ市内と違って色の規制がないからかな?

なぜか道路の中央も駐車場になっているようで、というか、勝手に駐車しているというか。この写真は走行中のバスの中から撮ったのですが、目の前の白のバンは中央車線の上に駐車。目隠し用に塗られた窓の塗装もはげ、道路の向こうに見える建物は錆び付き、アラブのおっさん達が立ち話。いやあ、女性一人では歩くのには勇気がいります。まあ、歩いてみればどおってことないのはわかっているのですが、慣れないせいか、なんか怖いです。

おお!ここにもあった、今流行の日本食レストラン。
もちろんエセ日本食で、中国人の経営だと思います。本物の日本の文化を知らない人々は、このエセ日本食が本当の日本食だと思い込んでいて、うれしそうにお店に入っていきます。オーマイゴッド!
こういう店では、驚きの光景が繰り広げられます。刺身の横にはチャーハンがあったり、白米だったとしても中国産のぱさぱさのお米。
出す方も出す方なら、食べる方も食べる方で、白米に醤油をぶっかけ、刺身は醤油の海に浸して食べる。醤油は日本のメーカーの容器に入っているものの、中身は中国産。
みそ汁にズッキーニやきゅうりが入っていたりして、なかなか楽しいというか、目が点になると言うか。
ここからヒントを得て、ヌーベルジャポニカ料理を思いつく!なんてことはまずありません。
それから、みそ汁は前菜のスープですので、メイン料理の前に出されることもあります。まあ、一度お試しあれ。

*エセ日本食屋の見分け方
-看板に日本の国旗がある。
-看板の文字は日本にない変わった字体。
-店内をのぞくと日本人客が一人もいない。
-店の装飾はやたら派手。赤とか金とか。
-においを嗅ぐと、中国米のにおいがする。

刺身は心配でも、焼き鳥はまあまあおいしかったりするので、肝試しと思って入ってみてください。衛生面で不安な場合は、食前食後にコカコーラを飲んで胃を消毒しましょう!

これは、バニョレにあるル・コロンビエ。ここは合気道の道場を利用した劇場。昼間は合気道場、夜は劇場に変身です。昔は看板がなくて、知る人ぞ知るの劇場でした。看板は付けないの?と聞いたら、そんなの付けてもすぐに壊される、ここはバニョレだよ。と言っていたのですが、今見ると看板がちゃんとあります。ということは、治安が良くなったということかしらん?

これはやはりバニョレのエシャンジェ。ここも昔の工場を改造したような劇場。少しずつダンスの公演が増えているみたい。
ル・コロンビエとエシャンジェは共にメトロ3番線の終点ガリエニ駅ですが、それぞれ駅の反対側にあります。ガリエニも面白くなりそうだな。ふむ。

5月15日 ワインと美術館

今日はラ・ニュイ・デ・ミュゼ、つまりフランス全土ほとんどの美術館が夕方から無料で入場できる日です。美術館によってはコンサートなどのイベントも行っているのですが、今年はダンスの出し物がすごく少なかったような気がします。ちょっとがっかりしていたところに友人から「おいしいワインを飲もうよ!」とのお誘い。

ワインが充実していて、日本人の店員さんもいるし、地下で選んだワインを2階のバーに持っていくと、販売価格で飲めるんだよ」とワインが大好きな友人に連れられて入りました。
これが、マドレーヌ大通りに面したお店LAVINIAの入り口です。

焦げ茶でまとめたシックなバー。持ち込んだワインを店員さんに渡すと、ワインの種類によってデカンタに入れてくれたり、どのワインから飲むかをちゃんと指示してくれます。みなさん知識が豊富なのだ。チーズの盛り合わせも、ハムの盛り合わせもおいしいし、ただでくれるパンとバター(なんとお代わり自由!)がめちゃおいしい。質の良いワインばかりなので、安いワインを頼んでもはずれることはないそうです。

人工芝のテラスには、日よけになる屋根も一部あるし、ゆったり座れる椅子もあるし、マドレーヌとは思えないほど静かなのでくつろげます。ただし、席数は限られているので、競争率は高い!時間を見計らって行ってください。それとも、屋内のバーに席を取って、時々外に散歩に行くというのも可能です。特に喫煙者の方。屋根のある公共の場での喫煙が禁止されていますので、このテラスに出て、思う存分煙草を吸ってください。

あ~いい気持ちになってしまった。この勢いで美術館に出動だぁ!!!
今夜はオーランジュリーに行ってみようかな。オーランジュリーはモネの睡蓮の絵で有名で、特に改装されてからは、光の具合が絶妙で素晴らしいという評判を聞いたしな。え~っと、マドレーヌ広場から、裏の細い道を通ってコンコルド広場に向かってみよう。

やっとのことでオーランジュリーに到着。酔っぱらっていないように歩くのは難しい、、、。

とういわけで、どのくらい待ったのかは覚えていませんが、どうにか美術館に入り、内部の混雑にさらに驚きました。美術館は静かなものと思っていましたが、人ごみを縫って歩き、人垣のむこうにようやく作品が見えるという感じでした。モネの睡蓮は360度に広がり、それはそれは素晴らしかったですが、何しろ人がわさわさいて、落ち着いてみることが出来ない状態。そこで、しんと静まり返った誰もいない美術館で、モネの睡蓮に囲まれている自分を想像する、、、という作業をしてみました。酔っぱらっている時にはこういう想像が容易にできることに気がつきました。モネ以外にもたくさんの収蔵があって、見応えがありました。が、正直言って詳しいことは何一つ覚えていません。すみません。。。。。
このあとに、いろいろ写真を撮ったのですが、すべてぶれてました。カメラの手ぶれ対策装置をかけてもだめでした、、、。(反省)

5月19日 シャイヨー劇場のストライキ

超人気のホセ・モンタルボとドミニク・エルヴューのダンス公演の初日。なんと、前代未聞のシャイヨー宮劇場のストライキ。もちろん公演は中止です。まいったなあ、一番人気のダンス公演にやるかね。まあ、アピールするのが目的だから当たり前か。
何でも、劇場への助成金が減らされたために、劇場主催の新作が創れなくなるとか、常任スタッフを雇えなくなることへの抗議だったらしい。フランスの多くの劇場は貸し小屋ではなく、劇場が作品を買い上げたり、新作を創る費用を出したりするので、入場収入だけでは当然まかなえず、国や地方自治体などからの援助がないと経営が出来ないのです。現在シャイヨー宮劇場はダンスの劇場に指定されていますが、マイナーなコンテンポラリーダンスは真っ先に予算を削られたということなのでしょうか?

山田マミ プロフィール

幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、、、あっという間に13年。住めば都のフランスはパリで、納豆と豆腐を食べ、中華街でベトナム麺をすすり、日曜日はマルシェで季節の野菜と魚を買い、時に日本のカボチャを育て、楽しく過ごしております。

 
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