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山田マミのやっぱり、パリが好き

山田マミのやっぱり、パリが好き

フランス・パリ在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、パリっ子たちの日常生活も、
山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!

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ダンスフェスティバルがあちこちで

劇場のシーズンのラストスパートとフェスティバル開幕が重なる7月は忙しい。劇場は目玉作品を締めに持ってくるし、パリや地方のフェスティバルは始まる。
パリでは、「パリ・ダンスの夏」がアルビン・エイリー舞踊団を呼び、キューバ国立バレエ団もほぼ同時期、それにパリ・カルチエ・デッテと続く。南仏では6月から続いているモンペリエダンスが終わると同時に始まるアビニヨン、そしてその近くのヴェゾンなどと続く。悩んだ挙句、体力金力の節約で、モンペリエとアビニヨンをはしごすることにして、パリはオペラ座の公演を見るだけにした。

オペラ座は、ガルニエ宮で「ラ・シルフィード」、バスティーユ劇場でケースマイケル振り付けの「ドラミング」で今シーズンを終える。「ドラミング」での若手のパワーに、これからのオペラ座の新たなる展開を予感。

翌朝TGVに乗ってモンペリエへ。3時間半の旅の後、モンペリエ駅に降りた途端に、南へ来たことを実感。暑い!日差しが強い!

これがモンペリエダンスの本拠地アゴラ。スタジオ形式の舞台や完全暗転になるイベントスペース、レジデンス用の部屋やリハーサル室、そしてCNDがある。この回廊のロッキングチェアで南仏の真っ青な空を眺めながらくつろぐのは気持ちがいい。もちろん日陰で。日向だと焦げます。

フェスティバル中の平日の朝行われるコンファレンス。誰でも入れるというのが嬉しい。この日は最終日で、モンペリエダンスのディレクター、モンタナリ氏とのトーク。

フェスティバルのトリは、オランダ国立バレエ団によるハンス・ファン・マーネンへのオマージュ公演。マーネンさん、紳士で物静かで、でもユーモアがあって、とても素敵な方でした。85歳にして未だ現役。

街の中心地コメディ広場の夜9時過ぎ。お祭りがあるのかと思うくらいの人で賑わっている。夜涼みに来るのか、この状態が真夜中まで続く。

この広場にあるオペラ座の中。

イスラエルの振付家シャロン・エイアルのカンパニーメンバーによるワークショップで、昨夜の公演で踊った作品の一部をみんなで踊る。ダンサーの説明付きだと、ふ~む、そういうことだったのかと納得。足と腕の美しさに見とれ、プリエの深さに驚愕。

フェスティバルはソルドの真っ只中なので、お店も要チェック。

お金をおろしに郵便局に行ったら、平日なのに閉まっている。見ればウインドウがこんな状態に!銃の跡かハンマーか?

モンペリエに来たら、海に行かなくちゃ。地中海は波が穏やかだし、遠浅なので、安心して泳げるのが嬉しい。まだ7月初めなので、人も少なくて、のんびりできるのがいい。

アビニヨン演劇祭のオープニングはSPAC

今年も、なのですが、いつもとはわけが違う。世界最大級のフェスティバルの開幕を、宮城聡率いるSPACが飾るのだぁ~!!!
これを見たいがために、モンペリエ行きを7月にして、はしごしたのでした。

厳しい荷物検査と通って中に入ると、もうそこは宮城聡の世界。一面に張られた水の上を、精霊が漂うように白い衣装の役者さんたちがろうそくを持って歩いていました。ダンスと違って言葉の壁が立ちはだかる演劇作品だけれど、さすが宮城聡。ササーッと現れた5人がフランス語で静岡を宣伝し、そして物語のあらすじをさっと語る。しかもこの厳かな雰囲気をぶち壊すかのように、マンガチックに。このメリハリとフランス語での説明は、観客心理を見事にくすぐり、一気に作品に引き込んだ演出はお見事。こうなったら、セリフが全部日本語だろうがそんなことは問題ない。有名なギリシャ神話だし、話を知らなくてもあらすじはわかったから、アンティゴネ和風版を楽しむことに集中できる。しかもこの和洋折衷が自然で、3年前のマハーバーラタとは趣を変え、心理描写を高い壁に投影した影で表す効果的な演出に飲み込まれた感じ。盛大な拍手の中、幕を閉じました。

メインの法王庁の中庭で、しかも開幕を飾るという快挙。私は宮城さんともSPACとも何の関係もありませんが、日本人という共通点を盾に、勝手に一人で興奮し、鼻高々。数日後に八百屋で買い物をしていたら、品の良い老婦人に「日本人ですか」と尋ねられ、「アンティゴネ」の感動を延々と語ってくれました。日本独特の文化もちゃんと理解してくれていて、演出のうまさを改めて実感。これでまた鼻高々。 宮城さん、そして出演者と裏方の皆様、良いものを見せてくださってありがとうございました。

今年法王庁の中庭で上演するのはたったの3団体。SPACの他に演劇1本と、ダンスではフラメンコのイスラエル・ガルヴァン。

ガルヴァンの新作「フィエスタ」を期待して見に行ったけれど、う~ん、ガルヴァンの踊りを期待すると外れるかも。歌手のおじさんのハチャメチャぶりには唖然としたけれど、ガルヴァンの踊りが少ないのは、まだ膝の故障を引きずっているのかしら。膝に巻いたサポーターが気になる。

今年のインは約50ほどの作品が上演されて、そのうちダンスは6作品。スジェ・ア・ヴィフはジャンル分けが微妙なので、まあこれを入れるともう少し増えるかな。
今年スジェ・ア・ヴィフ誕生20周年を記念した特別プログラムは超人気で、キャンセル待ちで運良くゲット。

ジョセフ・ナジとドミニク・メルシー参加作品が見られたのはラッキー。

インはこんな感じだけれど、街が賑やかなのはやっぱりOFFが元気だから。

まずは、OFF村に行って、全公演が載っているカタログ(無料)をゲットして、OFFカードを買うかどうかを悩むわけ。たくさん見るならやっぱりお得。

夏休みに入った学校を借り切っている。だからフェスティバルは夏休みと同時に始まるのだ。

OFF参加の公演数は約1480。年々増えている。この中でダンスは44作品、ダンステアトル(ダンスだかテアトルだか区別がつかないもの)が17あるから、60ほどの公演をチェックすれば良いということ。劇場で見れば、パランテーズ、CDCイヴェルナル、ゴロヴィン劇場はダンスをメインに上演。

定評があるのが、朝10時のパランテーズ劇場。パリ郊外のルイ・アラゴン劇場にレジデンスしているアーティストの作品なので、好き嫌いはあるにせよ、外れることは少ないという定評。
これは、若者やアマチュアを題材にした作品で人気のあるミカエル・フェリポーの作品で、街でたむろしていた若者がダンサーになるまでの個人史を作品に。偶然が人生をこんなに変えてしまったのかと驚いたけれど、受け入れる側もオープンマインドじゃないとダメなのだ。

シルベール・ラモットの「Ruines」。踊りも良かったけれど、中央のギタリストがすごかった。普通に抱えたギターと、横に立てかけたギターを片手で同時に演奏してしまう。しかも作品の中にちゃんと存在している。こんなギタリストを見たことがない。

ご覧の通り小さい劇場で、人気があるからすぐに満席になってしまう。早めに行ってウエイティングリストの上位に食い込むか、早めに予約すべし。

公演後は劇場の外で振付家やダンサーと話ができるのもいい。
1回の公演で30分の作品が2~3本見られるので、ちょっと得した気分。

フェスティバルの会期は3週間だけれど、そのうちの数日しか上演しない作品もあるので、計画は綿密に。
ダンスはマイナーだからか、朝10時開演が多い。見る方も大変だけれど、踊る方はもっと大変だと思う。朝10時に体なんか動きませんもの。

アビニヨンのダンス拡張センターCDCイヴェルナル。朝10時から夜9時45分まで、1日に7本のダンス作品を上演。全公演ほぼ満席という快挙で、この長蛇の列

今年はワインの試飲会も催してくれたCDCイヴェルナル。太っ腹~!

今年のゴロヴィン劇場は、ヒップホップが少なくなって、コンテンポラリーが少し増えた感じ。ここは朝11時から夜10時までダンスオンパレード。

その中で一番好きだったのが、エドワール・ユさん振り付けの「Meet me harfway」。 日本初演で太田垣悠さんとの共演だった作品を、ダンサーを代えてフランスバージョンで再演。18時半からの公演の前後は、路上宣伝も怠らない。津川友利江さんも応援にかけつけていました。評判は上々で、連日ほぼ満席。ユさんは日本でも時々ワークショップをしているそうで、日本語が上手。

コンディッション・デ・ソワ劇場。朝10時のダンス公演はなくなってしまったけれど、11年にわたって提携している台湾勢が大評判。
このお二人は、ティム・ダンスシアターの振付家バル・マディリンさん(右)とカンパニー創設者のお姉さんのルーザン・マディリンさんで、台湾の原住民の一つであるパイワン族の伝統的民俗舞踊と電子音楽をフュージョンさせた斬新な作品「アズ・フォー・ステップス」を上演。中国人が移り住む前の、純粋な台湾の文化を初めて見た。日本からさほど遠くない国なのに、その歴史を全く知らなかった自分が情けない。
この作品のチケットを取りに行ったら、その前の公演を見ていた人がどーっと出て来た。みんな笑顔で興奮気味。ということは、見る価値ありと見たので、早速予約。
今までにないサーカスを、という謳い文句で見せた Formosa Circus ArtのHow Long is now ?」は期待を裏切らず、笑いっぱなしの1時間。こりゃサーカスというよりコントだよ。どの家にもあるモップや洗剤容器、ハンガーなどを使ったパロディで、高度な技術のかけらもない。神妙な顔つきで袋を電子レンジに入れて、一体何が起こるのかと思ったら、単純にできたポップコーンを食べるだけだったり。でもこの人たち、本当はものすごいテクニックを持っているのだと思う。余裕が生んだ爆笑作品。確かに見たこともないサーカスだった。

今年日本からの参加団体はたったの2つ。連続参加の創作日舞の花柳衛菊さんと、お琴の演奏だけ。
やはりアビニヨン参加は、日本人にとってハードルが高いものなのかなあ。確かにお金はかかる。飛行機代、宿泊費に劇場使用料。せっかくだから他の公演を見ようと思ったら、さらにお金がかかる。でも、「こうして外の空気に触れて、他の国の人の作品を見ていると、世界のアートの流れがわかるし、色々な考え方があることに気がついて、それも一つの勉強かなと。それに1週間以上にわたっての連日公演ができる場所はここしかないから、積み重ねることが大切だと思っているので、これは修行です。」と言った花柳さんの言葉にう~ん、納得。

日本人は二人だけかと思っていたら、竹内梓さんが踊っていました。竹内さんは、ミュージシャンのフランク・ヴィグルーの作品「Aucun Lieu」にダンサーとして出演。ソロで踊っています。音楽と映像とダンスのフュージョン作品で、郊外のスケート場での上演。ちなみにスケート場は夏季休暇中。楽しみにしていたのに、電気系統の故障で途中で中止。よりによって私が見に来た日に故障するな~!
公演の合間に、「スジェ・ア・ヴィフ20年」を見に来ていたところをパチリ。

竹内さん出演作品のポスターと批評が張り出されてた。評判は上々らしい。

ハチャメチャパフォーマー、デイヴ・サンピエールのソロも見逃せない。ここまでやるか?!の体当たりパフォーマンス。翌日は体調不良で公演中止。そこまで体を張らなくてもと思うけれど、そこまでやっちゃう人なんでしょうね。本当は6時間ある作品で、アビニヨンでは1時間のダイジェスト版。半端じゃないので、一度は見ておくべき。

隣の公演をちょっと覗き見。

常設の牧場でのパフォーマンス。オフとは関係ないみたい。

山田マミ プロフィール

幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、、、あっという間に13年。住めば都のフランスはパリで、納豆と豆腐を食べ、中華街でベトナム麺をすすり、日曜日はマルシェで季節の野菜と魚を買い、時に日本のカボチャを育て、楽しく過ごしております。

 
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