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(2016.8.1 update)

青山季可 Garden vol.27

少女のような雰囲気と大人の気品を漂わせる青山季可。
舞台で大輪の華を咲かせる彼女は今、プリンシパルとして牧阿佐美バレヱ団をリードする。

Interview,Text : 林 愛子 Aiko Hayashi

 

ノイマイヤー作品に出演

ハンブルク・バレエ学校へも留学したのですね。

ハンブルグ・バレエの来日公演で出演させていただいたのが、ノイマイヤー版の「幻想~『白鳥の湖のように』」で。橘バレエ学校やAMスチューデンツを中心に集められた生徒たちで、なかには服部有吉君もいました。ルートヴィヒが好きになって、あとで彼に関する本など沢山読みましたが、その時は何も知りませんでした。でも引き込まれるものがあったんですね。私たちが出たのは一幕のパーティ・シーンだけなんですけど、ほんとに楽しかった。みんな舞台上でサンドイッチ食べたりブランコに乗ったり、そういう演出だったんです。

 

ルートヴィヒがきかっけでハンブルク・バレエスクールを目指したわけですね。

はい。私のいたシアター・クラスはドイツ人が一人もいなくて、私もドイツ語が話せなくて。ノイマイヤーについては日曜日に彼の作品から抜き出した部分を舞台で見たり、マッツ・エック作品を学んだり、40分間、曲をかけっぱなしでインプロビゼーションをやったり、つらかったですよぉ(笑)。でも振り返ると、楽しかったといえば楽しかったですね。治安も良く、学生だから安い席でいろいろ見たりもできましたから。

 

意地悪だったり出世欲が強すぎたりは、バレエの世界では続かない

お国柄とか取り組み方の違いから壁を感じたりしたことはなかったんですか?季可さんはシャイだけど警戒心はそんなに強くないのかしら?

でもダメだと思ったらダメなんですけど、仲よくなると長続きできる。私は、あまり筆まめじゃないので連絡をあまりしないんですけど、友達も慣れたみたいで(笑)。気持ちが穏やかな友人達だから長持ちしているのかな。この前来日したロイヤル・バレエにも学校時代からの友達がいます。価値観はある程度違うかもしれませんが、私の友達は、しっかりはしていても人を押しのけてまでという人はいない。意地悪だったり出世欲ばかり強すぎたりするとバレエの世界では続かないと思う。舞台はみんなでつくるものですから。

 

十代の少女がある時期、集中的に外国で踊りを学ぶわけですから、これはなかなか周囲の大人も心配されたかもしれませんね。

親もよく許してくれたと思います。私は精神的にそんなにタフでもなかったし、幼くもあったかもしれない。でも行ってみると、空気からして違いますから、そこにいるだけで総合的にみてバレエだけじゃない、芸術の世界に視野を広げることができました。

 

全幕のおもしろさを知った舞台

クラシックのテクニックについてはいかがですか?

私はあまり器用なほうではないのですが、小さい時にある程度、技術を身につけておいたことは、今になってみると良かったと思います。私の行った外国のバレエスクールだとテクニックはどちらかというと後回しなので、なかなか身につかなかったりするんです。 牧先生は、日本人の体形は外国の方に比べると薄いので、いかにそれを閉じて立体的に見せるかということをおっしゃっています。牧阿佐美バレエ団に入って、ゆっくり根気よく先生がたが教えてくださり、細かいことをいろいろ学びました。

牧阿佐美バレヱ団では、今、季可さんはプリンシパルとしてバレエ団を率いる立場ですね。何が季可さんをバレエ団で踊らせていると思いますか?

やっぱりバレエ団の公演に子役の頃から何度も出させていただいて、草刈民代さんとか佐々木想美さん、小嶋直也さんたちがいらした黄金時代と言われる時代にクララの役などで出演しながら先輩方の踊りを見せていただきました。そこで初めて全幕バレエの面白さというものに触れて、このバレエ団で踊りたいという思いが生まれたのだと思います。 

 

今、世界的には全幕物の上演が減っていますが、日本では牧阿佐美バレエ団をはじめ民間のカンパニーが頑張って上演しています。

たとえばドイツではカンパニーは多いけれど、コンテンポラリーが増えていますね。牧バレヱ団では、装置も牧先生が絶対これでなくてはと安易に妥協しないで作ってくださったおかげで、舞台に格調がありますし、「眠れる森の美女」も「白鳥の湖」も素晴らしくて、出演者としては幸せです。

古典を重視しながら、現代バレエも制作して、レパートリーの豊かさもあります。ところで牧先生の言葉で、忘れられないことはありますか。

牧先生はいつも、常に身体を楽器だと思いなさいとおっしゃっています。自分の内面は常に踊りに出るから気をつけなさい、人としてどうあるべきかを考えるように、と。そして、そのことを先生方も身を挺して教えて下さっています。

 
 

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